「一汁三菜」は、和食膳における基本的なスタイルとされています。主食であるご飯に汁物、主菜・副菜・副々菜(または副菜2品)の総菜(おかず)3品で構成されます。このようなスタイルが確立されたのは江戸時代の武家社会においてだとされていますが、栄養面において比較的良いバランスを保ちやすい構成のため、現在では家庭における食卓でのひとつの基準になっています。一般的に、主菜は肉や魚など動物性の惣菜、副菜は野菜や海藻類、豆腐などの植物性の惣菜で構成される場合が多いのですが、そのすべてを新鮮な食材から賄うことは大変なため、昔から保存食材を上手に工夫して使ってきました。特に、副菜・副々菜では、各家庭でも比較的簡単に作ることができる野菜類の漬物(香の物)が供されてきました。漬物とひと口に言ってもその種類はさまざまで、漬け込む方法も多彩ながら、材料となる野菜も地方地方で独自のものが使われている場合があります。例えば有名な「野沢菜漬」は、長野県の野沢温泉村を中心に信越地方で栽培されてきた「野沢菜」を、塩を使って樽に漬け込み、山間の寒冷な気候を利用して作られています。仕込みは11月になってから行い、年末年始に食べ頃を迎えます。ちなみに野沢菜は、現在では全国で栽培されるようになっていますが、古くから「高菜」「広島菜」とともに「日本三大漬菜」と呼ばれてきました。この野沢菜を「長野県の漬物文化として子どもたちに伝えたい」という思いから、学校給食に利用しているケースがあります。「信濃路あえ」と名前が付けられた、野菜たっぷりの献立です。野沢菜漬けは、そのままではどうしても塩分量が気になる為、キャベツや小松菜などの野菜と刻んだたくあんなどを加え、醤油やかつお節などで味を調えたものが提供されています。