2月8日と12月8日は、古くから「事八日(ことようか)」と言って、何か事を始めたり納めたりするのに良い日だとされてきました。農作物を作る際の儀礼として2月8日から取りかかり、12月8日に収めたという説と、正月の歳神様を迎える準備を、12月8日から始めて2月8日に収めたという2つの説が由来としてありますが、こういった大事な日ですから、無病息災や五穀豊穣を願って「お事汁(おことじる)」と呼ばれるみそ汁を食べるという風習が生まれたのだと思われます。お事汁は、別名「六質汁(むしつじる)」とも呼ばれていますが、その名の通り、里芋・大根・にんじん・ごぼう・こんにゃく・あずきなどを入れて作られる具だくさんの味噌汁となっています。現代的な感覚では、あずきをみそ汁の具にするのはめずらしく感じますが、あずきを入れるのは「魔除け」の意味があるのだそうです。あずきの赤い色が、邪気を払うとされてきたことにちなみますが、おめでたい日に食べる赤飯や、季節の変わり目に食べるぼた餅やおはぎの餡に小豆を使うのと同じ意味があるようです。なお、お事汁に入れる具材は地域によって異なるようですが、どちらの日も寒い時期にあたるため、野菜たっぷりの栄養豊富な味噌汁にするという点では共通しています。海がある地方では、複数の海産物を使ってだしを取ったり、里山ではくわいや焼き栗を入れるなど、土地土地の特色を出したものとなっています。